2018年度の国公立で公開されている問題から管理人が独断と偏見で選出した問題を解説する記事
この問題は東北大学後期理系の第6問です。
数列a1,a2,…をan=2n∫1√ex(log x)ndxで表す。
eは自然対数の底であり、無理数であることが知られている。
(1) 不等式 1/(2(n+1)) ≦ an ≦ e/(2(n+1)) を示せ。
(2) 各nに対してan=pne+qnとなるように有理数pnとqnをとる。n ≧ 2のとき、pnをpn-1で、qnをqn-1でそれぞれ表せ。
(3) lim n→∞((-1)npn)/(n!)を求めよ。
eは自然対数の底であり、無理数であることが知られている。
(1) 不等式 1/(2(n+1)) ≦ an ≦ e/(2(n+1)) を示せ。
(2) 各nに対してan=pne+qnとなるように有理数pnとqnをとる。n ≧ 2のとき、pnをpn-1で、qnをqn-1でそれぞれ表せ。
(3) lim n→∞((-1)npn)/(n!)を求めよ。
丁寧な誘導で一直線、と思いきや、ちょっとした処理が必要です。
(1)まずは積分計算の式を変形することを考えます。
漸化式は難しそうですがx=etと置換するとよさそうです。
(1) x=etと置換するとan=2n∫01/2 et tn・et dt = ∫01/2e2t(2t)ndtがわかる。
この後は不等式が欲しいのでうまくはさみましょう。分母に(n+1)とかがありますので(2t)nを活かすとうまくいきそうです。
0 ≦ t ≦ 1/2のとき1 ≦ e2t ≦ eであるので
∫01/2(2t)ndt ≦ ∫01/2e2t(2t)ndt ≦ ∫01/2e(2t)ndt
これらを積分すると∫01/2(2t)ndt = [(2t)n+1/2(n+1)]11/2 = 1/(2(n+1))などから
1/(2(n+1)) ≦ an ≦ e/(2(n+1))がいえる。
∫01/2(2t)ndt ≦ ∫01/2e2t(2t)ndt ≦ ∫01/2e(2t)ndt
これらを積分すると∫01/2(2t)ndt = [(2t)n+1/2(n+1)]11/2 = 1/(2(n+1))などから
1/(2(n+1)) ≦ an ≦ e/(2(n+1))がいえる。
(2)ここからは漸化式を作るようです。置換した後で考えてみましょう。するとe2tを部分積分することでtの次数を減らせそうです。
(2)an=∫01/2e2t(2t)ndt=[e2t(2t)n/2]01/2-n∫01/2e2t(2t)n-1dt = e/2 – nan-1がわかる。
すなわちpne+qn=e/2-npn-1e-nqn-1が成り立つ。
すなわちpne+qn=e/2-npn-1e-nqn-1が成り立つ。
あとは比較式から解くだけ、といいたいところですがひとつ確認しましょう。
ここでpn+npn-1-1/2 ≠ 0であるとすると
e=-2(qn+nqn-1)/(2pn+2npn-1-1)とできてしまい有理数になってしまうので問題の設定に矛盾する。
したがってpn+npn-1-1/2=0であるからpn=1/2-npn-1であり、
同様に計算してqn=-nqn-1
e=-2(qn+nqn-1)/(2pn+2npn-1-1)とできてしまい有理数になってしまうので問題の設定に矛盾する。
したがってpn+npn-1-1/2=0であるからpn=1/2-npn-1であり、
同様に計算してqn=-nqn-1
(3)ここで工夫が要されます。(2)で計算式ができたのでそれで突き進めたくなりますが、
それだとどうしても詰められません。(1)で得られた計算式を利用しましょう。
(3) (1)においてan=pne+qnと変形すると
1/(2(n+1)) ≦ pne+qn ≦ e/(2(n+1))となり、さらに変形することで
1/(2e(n+1))-qn/e ≦ pn ≦ 1/(2(n+1))-qn/e
とできる。
1/(2(n+1)) ≦ pne+qn ≦ e/(2(n+1))となり、さらに変形することで
1/(2e(n+1))-qn/e ≦ pn ≦ 1/(2(n+1))-qn/e
とできる。
ここから真ん中の式を求める形式にしていきますが、符号に注意しましょう。
これよりnが奇数のときは(-1)n=-1なので
qn/(en!)-1/(2(n+1)!)≦ (-1)npn/(n!) ≦ qn/(en!)-1/(2e(n+1)!)
nが偶数のときは(-1)n=1なので
1/(2e(n+1)!)-qn/(en!) ≦ (-1)npn/(n!) ≦ 1/(2(n+1)!)-qn/(en!)
となる。
qn/(en!)-1/(2(n+1)!)≦ (-1)npn/(n!) ≦ qn/(en!)-1/(2e(n+1)!)
nが偶数のときは(-1)n=1なので
1/(2e(n+1)!)-qn/(en!) ≦ (-1)npn/(n!) ≦ 1/(2(n+1)!)-qn/(en!)
となる。
さらに進めたいですのでqnは展開したほうがよさそうです。
a1=∫01/22te2tdt = [te2t]01/2-∫01/2e2tdt = e/2 – [e2t/2]01/2 = 1/2
であるのでq1=1/2
また(2)よりqn=-nqn-1なのでこの両辺を(-1)n/(n!)倍すると
(-1)nqn/(n!) = (-1)2(-1)n-1qn-1/((n-1)!)=(-1)n-1qn-1/((n-1)!)となり、
すなわち(-1)nqn/(n!)はnによらない値となるので、(-1)1q1/(1!)=-1/2となる。
であるのでq1=1/2
また(2)よりqn=-nqn-1なのでこの両辺を(-1)n/(n!)倍すると
(-1)nqn/(n!) = (-1)2(-1)n-1qn-1/((n-1)!)=(-1)n-1qn-1/((n-1)!)となり、
すなわち(-1)nqn/(n!)はnによらない値となるので、(-1)1q1/(1!)=-1/2となる。
ここまでくればもう一息。2本の不等式は範囲のゆるい方を使って合わせてしまいましょう。
したがってqn/(n!)=(-1)n+1/2となるのでこの値はnが奇数ならば1/2,nが偶数ならば-1/2である。
これをpnの不等式と合わせると
nが偶数のとき1/(2e(n+1)!)+1/(2e) ≦ (-1)npn/(n!) ≦ 1/(2(n+1)!)+1/(2e)
nが奇数のとき1/(2e)-1/(2(n+1)!)≦ (-1)npn/(n!) ≦ 1/(2e)-1/(2e(n+1)!)
1/(2e)-1/(2(n+1)!) < 1/(2e) < 1/(2e(n+1)!)+1/(2e)と
1/(2e)-1/(2e(n+1)!) < 1/(2e) < 1/(2(n+1)!)+1/(2e)を利用すると不等式は
1/(2e)-1/(2(n+1)!)≦ (-1)npn/(n!) ≦ 1/(2(n+1)!)+1/(2e)
と合わせることができる。
これらの両側はn → ∞とするといずれも1/(2e)に収束するので、
lim n→∞((-1)npn)/(n!)=1/(2e)
これをpnの不等式と合わせると
nが偶数のとき1/(2e(n+1)!)+1/(2e) ≦ (-1)npn/(n!) ≦ 1/(2(n+1)!)+1/(2e)
nが奇数のとき1/(2e)-1/(2(n+1)!)≦ (-1)npn/(n!) ≦ 1/(2e)-1/(2e(n+1)!)
1/(2e)-1/(2(n+1)!) < 1/(2e) < 1/(2e(n+1)!)+1/(2e)と
1/(2e)-1/(2e(n+1)!) < 1/(2e) < 1/(2(n+1)!)+1/(2e)を利用すると不等式は
1/(2e)-1/(2(n+1)!)≦ (-1)npn/(n!) ≦ 1/(2(n+1)!)+1/(2e)
と合わせることができる。
これらの両側はn → ∞とするといずれも1/(2e)に収束するので、
lim n→∞((-1)npn)/(n!)=1/(2e)
これで最後まで進みました。思考力と論理の正しさを問うやや難しめの問題だったと思います。