2018私立の注目問題 東京慈恵会医科大学-2

2018年度の私立で公開されている問題から管理人が独断と偏見で選出した問題を解説する記事
記事の公開日はあれば実施日、実施日がなければ公開日にしています。

この記事の問題は東京慈恵会医科大学の第2問です。(Webで見やすいように一部表現を変えています)

nを自然数とする。微分可能な関数fn(x)が関係式
fn(x) = e-xxn+1+∫0xe-tfn(x-t)dt
をみたしている。(eは自然対数の底)
(1) fn(x)を微分してできる導関数を求めよ。
(2) mは2以上の自然数とする。x>0であるときe-xxm≦e-mmmを示せ。
(3) x → ∞ としたときのfn(x)の極限値を求めよ。

丁寧に誘導しているようですが思考力が要求されます。
管理人は(3)で何時間もはまってしまいました…

ここから下に解説が記されています。

(1)は微分した式を求める、ということですが、右辺の積分にxが入っていてこのままではうまくいきません。右辺の内部からxを除くことができればいけそうです。ということでu=x-tで置換してみます。

右辺の積分でu=x-tと置換すること積分の式は
x0{-eu-xfn(u)}du = e-x0xeufn(u)du [1] と変形できる。したがって関係式を微分すると
fn‘(x)=-e-xxn+1+(n+1)e-xxn-e-x0xeufn(u)du + e-x ∙ exfn(x)
となる。[1]を利用して積分している項を消去することでこの右辺は
-e-xxn+1+(n+1)e-xxn-(fn(x)-e-xxn+1) + fn(x) = (n+1)e-xxn
となる。したがってfn‘(x)=(n+1)e-xxn

(2)不等式の右辺が左辺においてx=mとしたものになっています。これは気づきやすいですし、気づけば証明は易しいと思います。

gm(x)=e-xxmとおく。この関数をxで微分すると
gm‘(x)=-e-xxm+me-xxm-1=(m-x)e-xxm-1
となる。したがってgm(x)は0<x ≦ mにおいて増加し m ≦xにおいて減少するので
x <0のとき gm(x) ≦ gm(m)すなわちe-xxm≦e-mmmがわかる。

(3)かなりの難問です。わざわざfn(x)とnを付記しているところからnを用いた関係式を作る、という着想を得ないとたぶん解けません。管理人はそこになかなかたどり着きませんでした。

(1)の結果からfn(x)=fn(0)+(n+1)∫0xe-xxndxである。
問題の関係式でx=0を代入するとfn(0)=0が得られるので
fn(x)=(n+1)∫0xe-ttndt
となる。部分積分を利用することで
fn(x)=(n+1)[-e-ttn]0x+n(n+1)∫0te-txn-1dt
=n(n+1)∫0te-txn-1dx -(n+1)e-xxn
がわかる。したがって
f1(x)=2∫0te-tdt -2e-xx=2[-e-t]0x-2e-xx= 2-2(1+x)e-x
でありn ≧ 2のとき
fn(x)=(n+1)(fn-1(x)-e-xxn) [2] となる。ここでhn(x)=fn(x)/(n+1)!を考えると、[2]の両辺を(n+1)!で割ることで
hn(x)=hn-1(x)-e-xxn/n!
がわかる。したがってh1(x) = 1-(1+x)e-xを考慮すると
hn(x) = 1 – ∑k=0n(e-xxk/k!)
となる。(2)よりx >0 のときe-xxk+1≦e-k-1(k+1)k+1であるからx >0のとき
1-(1/x)∑k=0n(e-k-1(k+1)k+1/k!) ≦ hn(x) ≦ 1
となる。したがって x → ∞ とすると両辺は1に収束するのでhn(x)も1に収束する。
fn(x)=(n+1)!hn(x)であるのでx → ∞とするとfn(x)は(n+1)!に収束する。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする